
オフィス移転や新規開設を検討する中で、「居抜きオフィス」という選択肢を耳にした方も多いのではないでしょうか。「本当に内装費は安く済むのか」「退去時にトラブルにならないか」「自社の業種に合うのか」――判断材料がそろわないまま、見送ってしまうケースも少なくありません。
この記事では、SOHO東京で居抜き物件を多数取り扱ってきた営業担当スタッフが、
- 居抜きオフィスの基本と、他形態(スケルトン・セットアップ)との違い
- コスト・スピード両面でのメリットと、見落とされがちなデメリット
- 契約前に必ず確認すべき3つのポイントと、向いている業種
について、現場で見てきた事例をもとに解説します。
■ この記事の結論
- 居抜きオフィスとは、前テナントの内装・什器・設備が残ったまま貸し出される賃貸オフィスのこと
- 最大のメリット:内装工事費を坪あたり20〜40万円分(10坪規模で200〜400万円)削減でき、契約から入居までの期間を1〜2ヶ月短縮できる
- 最大のデメリット:レイアウト変更の自由度が低く、原状回復義務の引き継ぎ条件が物件ごとに異なるため、契約前の精査が必須
- 向いている業種:スタートアップ、内装にこだわらない事業、急な拡張・縮小に対応したい企業
- 物件選びの最重要ポイント:前テナントの業種が自社と近いほど、追加工事が少なく済む
目次
- 1.居抜きオフィスとは|スケルトン・セットアップとの違い
- 2.いま居抜きオフィスが注目されている背景
- 3.居抜きオフィスが選ばれる4つのメリット
- 4.知っておくべき居抜きオフィスのデメリット
- 5.居抜きオフィスが向いている業種・向いていない業種
- 6.契約前に必ず確認すべき3つのポイント
- 7.よくある質問(FAQ)
- 8.まとめ|SOHO東京の居抜き物件一覧へ

1. 居抜きオフィスとは|スケルトン・セットアップとの違い
居抜きオフィスとは、前テナントが使用していた内装・設備・什器をそのまま残した状態で貸し出される賃貸オフィスのことを指します。一般的な賃貸オフィスでは、退去時に借主が「原状回復工事」を行い、入居前の状態に戻したうえで貸主に引き渡しますが、居抜きオフィスではこの原状回復を省略し、残された造作物・設備を次の入居者がそのまま引き継ぐのが最大の特徴です。
混同されやすい3つの形態を整理すると、以下のような違いがあります。
| 形態 | 内装の状態 | 内装費の負担 | 賃料水準 |
|---|---|---|---|
| 居抜きオフィス | 前テナントの内装・什器が残置 | 借主側(譲渡対価が発生する場合あり) | 周辺相場と同等 |
| セットアップオフィス | 貸主が新規に内装工事を実施 | 貸主負担(賃料に転嫁) | 周辺相場の1.2〜1.4倍 |
| スケルトンオフィス | コンクリート躯体のみ、内装なし | 借主が全額負担 | 周辺相場と同等 |
スケルトンは自由度が最大ですが内装費もフルでかかり、セットアップは内装が整っている代わりに賃料が割高。居抜きはその中間に位置し、「現状の内装をそのまま使う前提で、コストとスピードを取りに行く」選択肢と整理できます。
2. いま居抜きオフィスが注目されている背景
居抜きオフィスは、1990年代のバブル崩壊期に飲食店業界で広がった形態が起点と言われています。当時オフィス領域では「使い古された残置物」というネガティブなイメージが強く、流通量は限定的でした。
状況が大きく変わったのは2010年代後半以降です。スタートアップ・ベンチャー企業の増加、テレワーク導入によるオフィス縮小・最適化の動き、そして都心オフィス賃料の高騰が重なり、「初期費用を抑えて素早く入居したい」というニーズが急増しました。これに応える形で、グレードの高い居抜き物件が市場に出回るようになっています。
特に東京都心では、原状回復にかかるコストや時間を回避したい退去側と、内装工事費を圧縮したい入居側の利害が一致しやすく、需給ともに拡大しています。グレードの高い居抜き物件は公開前に契約が決まることも珍しくなく、「居抜きで貸せる物件は、すぐに次が決まる」のが現在の都心オフィス市場の実態です。

3. 居抜きオフィスが選ばれる4つのメリット
居抜きオフィスを選ぶ最大の理由は、コストとスピードを同時に取りに行ける点にあります。SOHO東京の取扱実績をもとに、具体的な数字で整理します。
メリット1:内装工事費を大幅に削減できる
一般的なオフィスの内装工事相場は坪単価20〜40万円です。これを規模別に換算すると、削減効果は以下のとおりです。
- 10坪規模:200〜400万円
- 20坪規模:400〜800万円
- 30坪規模:600〜1,200万円
居抜き物件であれば、この内装工事費の大部分が不要になります。
メリット2:契約から入居までの期間が短縮できる
通常のスケルトン物件では、契約 → 内装設計 → 工事 → 入居の流れで2〜4ヶ月を要します。一方、居抜きオフィスは契約 → 軽微な調整 → 入居で2週間〜1ヶ月に短縮可能。急な事業拡張や新拠点立ち上げに対応しやすいのが特徴です。
メリット3:什器・OA機器の購入コストも抑えられる
デスク・チェア・会議室什器・複合機などが残置されている物件では、初期備品コストを100〜500万円程度カットできるケースもあります。「机1つから揃える」スタートアップにとっては特に大きなインパクトです。
メリット4:賃料はセットアップオフィスより安い傾向
内装工事費が貸主負担として賃料に転嫁されるセットアップ物件は、相場の1.2〜1.4倍が一般的です。居抜きは内装が「現状渡し」のため、賃料は周辺相場と同等水準に収まることが多く、ランニングコストの観点でも有利です。

4. 知っておくべき居抜きオフィスのデメリット
メリットが大きい一方、居抜きオフィスには契約前に必ず把握しておきたいリスクもあります。
デメリット1:レイアウト変更の自由度が低い
既存の間仕切り・配線・什器配置をベースに使うため、ゼロから動線設計したい場合は不向きです。物件によっては、管理会社が追加工事を認めないケースもあります。「壁を1枚抜くだけ」のつもりが対応不可、ということも実際に起こります。
デメリット2:原状回復義務が複雑になりやすい
居抜きオフィスで最もトラブルが多いのが、退去時の原状回復条件です。
- 「居抜き状態のまま退去でOK」
- 「次の入居者が決まれば居抜きで引き渡し可」
- 「契約上はスケルトン戻しが必須」
物件ごとに条件が異なり、退去時の費用が数十万〜数百万円単位で変動します。契約書に明記がない場合は必ず書面で確認してください。
デメリット3:残置物の品質・所有権にバラつきがある
残置されている什器・設備は中古品のため、軽微な傷・汚れは「現況優先」が原則で、これらに対する保証はありません。さらに注意したいのは、OA機器がリース契約の引き継ぎだった場合。月々のリース料が継続発生し、想定外のランニングコストになるケースもあります。
デメリット4:物件数が限られ、競争が激しい
グレードの高い居抜き物件は公開前に決まることが多く、ポータルサイトを眺めているだけでは出会えません。居抜き専門の取扱実績がある仲介会社経由で、未公開段階で情報を取りに行く動き方が現実的です。
5. 居抜きオフィスが向いている業種・向いていない業種
居抜きオフィスは、業種・事業フェーズによって相性が大きく分かれます。
向いている業種・企業
1. スタートアップ・ベンチャー企業 限られた資金を事業成長や採用に集中させたいフェーズで、内装に数百万円を投じる優先度は低め。即入居して事業を回し始めることの価値が大きい業態です。
2. IT・Web系、SaaS企業 業務の大半がPC上で完結し、特殊な設備を必要としないため、既存内装をそのまま使いやすい。
3. 士業・コンサル系の小規模事務所 会議室と執務スペースがあれば業務が成立する業種は、前テナントの構成がそのまま流用できます。
4. 急な拡張・縮小に柔軟に対応したい企業 事業規模の変化が速く、長期的な内装投資を回収しづらい企業ほど、初期コストを抑えられる居抜きの恩恵が大きくなります。
向いていない業種・企業
- 来客時のブランディングが重要な業種(ハイブランドのショールーム、デザインで魅せたい広告代理店など)
- 特殊な設備や動線が必要な業種(医療系、製造系、撮影スタジオなど)
- 長期入居が前提で、内装を資産として作り込みたい企業
6. 契約前に必ず確認すべき3つのポイント
ここからが実用情報の本丸です。居抜きオフィス契約で失敗しないために、最低限おさえておきたい3つの確認軸を紹介します。
ポイント1:前テナントの業種を必ず確認
前テナントが自社と近い業種であれば、内装・配線・会議室配置がそのまま活きます。逆に飲食店居抜きをオフィスに転用するようなケースでは、給排水・換気・床荷重の都合で結局500万円規模の改修費が発生した事例もあります。
「居抜き=必ず安い」ではなく、業種マッチ度で実質コストが大きく変わることを覚えておいてください。
ポイント2:原状回復義務の範囲を契約前に書面で明確化
契約前に書面で必ず確認したい3点です。
- 退去時に「居抜き渡し」が認められるか/「スケルトン戻し」が必須か
- 残置物のうち、自社が処分責任を負う対象はどこまでか
- 入居中に追加した造作物の扱い(原状回復対象になるか)
ここを曖昧にしたまま契約すると、退去時に100万円単位の想定外コストが発生します。「口頭で大丈夫と言われた」は通用しません。
ポイント3:什器・OA機器の所有権と契約形態
残置物の引き継ぎ方法は、大きく3パターンに分かれます。
- 無償譲渡:そのまま使えてコストゼロ
- 有償譲渡(造作譲渡):数十万〜数百万円の譲渡対価が発生
- リース引き継ぎ:月額支払いが継続発生
特に造作譲渡の場合は、造作譲渡契約書の有無と内容を必ず確認してください。何が、どの数量、いくらで譲渡されるのかを明確にすることで、入退去時のトラブルを未然に防げます。
このほか、内見時には空調の稼働年数・通信回線の引き込み状況・電気容量もチェックリストに入れておくと安心です。

7. よくある質問(FAQ)
Q. 居抜きオフィスとは何ですか? A. 前テナントが使用していた内装・設備・什器が撤去されず、そのまま残った状態で貸し出される賃貸オフィスのことです。一般的なオフィスでは退去時に「原状回復」が行われますが、居抜き物件はそれを行わず次の入居者に引き継ぐのが最大の特徴です。
Q. 居抜きオフィスとセットアップオフィスの違いは何ですか? A. 居抜きオフィスは前テナントの内装を引き継ぐ形態で、内装費は借主側の交渉対象(造作譲渡の場合あり)です。セットアップオフィスは貸主が内装工事を行って提供する形態で、その費用が賃料に上乗せされます。賃料は居抜きの方が安く、内装の新しさはセットアップの方が上、という関係です。
Q. 居抜きオフィスでどれくらい内装費を削減できますか? A. 一般的な内装工事の相場は坪単価20〜40万円です。10坪規模で200〜400万円、20坪規模で400〜800万円、30坪規模で600〜1,200万円の削減が見込めます。
Q. 居抜きオフィスはどんな業種に向いていますか? A. スタートアップ・ベンチャー、IT・Web系、士業、内装にこだわらず即入居したい事業者に特に向いています。クライアント来訪が少なく、レイアウトのカスタマイズ重要度が低い業種ほど相性が良いです。
Q. 居抜きオフィスの退去時、原状回復は必要ですか? A. 物件によって異なります。次の入居者が居抜きで決まれば原状回復不要のケースもあれば、契約上スケルトン戻しが必須のケースもあります。退去コストが大きく変わるため、契約時に必ず書面で確認してください。
8. まとめ|SOHO東京の居抜き物件一覧へ
居抜きオフィスは、内装工事費を坪あたり20〜40万円分削減でき、入居までの期間も1〜2ヶ月短縮できる、コスト・スピード両面で優れた選択肢です。一方で、レイアウトの自由度や原状回復の条件は物件ごとに大きく異なるため、契約前の精査が成否を分けます。
特に注意したいのは、前テナントの業種マッチ度・原状回復義務の範囲・残置物の所有権の3点。ここをクリアできれば、居抜きオフィスは中小企業・スタートアップにとって極めて合理的な選択になります。
SOHO東京では、東京都心の居抜きオフィスを多数取り扱っており、ポータルサイトには出ない未公開段階の物件情報もご紹介可能です。「自社の業種に合う居抜きはあるか」「退去条件はどうなっているか」など、判断材料を一緒に整理させていただきます。お気軽にご相談ください。
